【海外の反応】独出版社「アーリア人だと証明しろ」→トールキンの返信で独語版は19年塩漬けに
ナチス政権下ドイツでの出版条件「アーリア人である証明」、トールキンの返答
1938年、『ホビットの冒険』のドイツ語出版を検討していたベルリンの出版社が、著者J・R・R・トールキンに対し、ナチス政権下の人種法に従う形で“アーリア人(arisch)”の血筋であることを書面で証明するよう求めてきた。第一次大戦に従軍した経験を持つトールキンは、要求の意味を執拗に問い質したうえで、「残念ながら自分にはユダヤ系の祖先はいないようだ」と皮肉りつつ、ドイツ系の姓を誇りに思ってきたと綴る痛烈な返信を用意した。この出版交渉は結局まとまらず、『ホビットの冒険』が実際にドイツ語で読めるようになったのは、手紙から19年後の1957年だった。海外掲示板では当時トールキンが実際に書いたとされる手紙の全文とともに、この逸話への反応が集まった。以下、海外掲示板の主要な反応を訳して紹介する。
最近知ったんだが、1938年に『ホビットの冒険』のドイツ語版を出す話が持ち上がった時、出版社がトールキン本人に「アーリア人だと証明しろ」と言ってきたらしい。それで本人が用意した返事がこれなんだが――
この男、ナチス政権まるごとに平手打ちを食らわせておきながら、それを高尚な文学みたいな文章に仕上げてるんだからな
トールキンは根っからの反権威主義者で、右であれ左であれ極端な政治運動には等しく懐疑的だった人物だったらしい
>>1 本人が実際に用意した返信の全文がこれだ。 「お手紙ありがとうございます。貴社の言う“arisch(アーリア人)”が何を意図しているのか、正直よく分かりません。私はアーリア人――すなわちインド・イラン系――の血筋ではありません。私の知る限り、私の先祖にヒンドゥスターニー語、ペルシャ語、ジプシー語、あるいはそれに類する言語を話した者はおりません。もし貴社が私にユダヤ系の血筋があるかを尋ねているのだとすれば、残念ながら私にはそのような才能ある民族の祖先はいないようだ、とお答えするほかありません。私の高祖父は18世紀にドイツから英国へ渡ってきた人物で、それ以外の血筋は純粋に英国系です。つまり私は英国臣民であり、それで十分なはずです。とはいえ私は自分のドイツ系の姓を誇りに思ってきましたし、先の遺憾な戦争の期間中(私は英国軍に従軍していました)も、その誇りを持ち続けてきました。ただ一言申し添えずにはいられません――もしこうした不躾で見当違いな詮索が文学の世界で当たり前になっていくのなら、ドイツ系の姓が誇りの源ではなくなる日もそう遠くはないでしょう。」 「貴社の照会はおそらく貴国の法律に従うためのものでしょうが、それを他国の臣民にまで適用しようとするのは筋違いというものです。ましてやそれが私の作品の価値や出版の可否に何らかの関わりを持つわけでもないのに(実際そのような関わりはありません)、貴社は私の“Abstammung(血統)”を確認することなく、すでにそれを了承済みであるようですから、なおさらです。」
彼がヒトラーをどれほど“堕落(perversion)”だと見なしていたかが、文章からはっきり伝わってくる。作品に滲む悪への眼差しそのものだ。見事なもんだ。
完全に名文で殴ってる案件だな。この返事が実際に出版社へ届いた時、向こうがどんな顔をしたのか見てみたかったよ
>>2 一級品の返しだ
>>2 これほど“いかにもイギリス人”な切り返しは見たことがない。美しくて、それでいて鋭い
>>2 自分だったら「錆びた熊手とでもヤってろ」くらいしか思いつかなかっただろうな。だから自分は賞を獲るような小説を書けないんだ……
「自分で判断できるはずのことを、わざわざ本人に聞かないと分からない」っていう理論を、これ丸ごと論破してるな
>>9 優生学に対する最良の反論の一つだよ、立証の必要すらないけど
これはファシズムが抱える致命的な弱点の縮図だよ。すべてが“純血かどうかの踏み絵”と忠誠心だけで判断されると、その基準から外れた有能な人間を切り捨てて、無能な忠誠者だけを重用することになる。ドイツはナチ党の言いなりにならなかったというだけの理由で、偉大な文学作品を一つ逃したわけだ。他の分野でも同じことが起きていた(アインシュタインなんかが好例だな)
>>12 むしろもっと恐ろしいのは、当時ドイツで最も才能あるクリエイターの多くが体制に迎合して、ナチ党のために以前と変わらない水準の作品を作り続けていたという事実の方だと思う
これはよく繰り返される都市伝説なんだが、トールキンがこの手紙を書いたのは事実でも、もう一通もっと穏当な版も用意していて、どちらを送るかは出版社側に判断を委ねていた。実際にイギリス側に残っていたのはこの手紙の方なんだ
>>14 自分が読んだ記事だと、実際にはどちらが送られたのか分かっていないらしい。ただ、この方が送られた可能性は低そうだとも書いてあった。トールキンの頭の中を覗けるという意味では、面白い資料であることに変わりないけどな
>>14 とはいえ、この手紙は実際にこのドイツの出版社宛てに書かれたもので、イギリス側の出版社が送ることにも本人は同意していた。送られなかった可能性が高いという話と、トールキンがこれを書いて送ることを了承していたという話は、また別の問題だよ
「皮肉交じりの誉め言葉(backhanded compliment)」なら知ってるけど、「皮肉交じりの返信(backhanded response)」っていうのは初めて聞いたな
翻訳元■